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「消滅可能性都市」という意味不明の用語

business.nikkeibp.co.jp

少し前に話題となっていた、「消滅可能性都市」ですが、話題性を得るために多少強い言葉を使っただけの中身の無い用語だなと常々感じていたので、少し整理します。

そもそも消滅可能性都市とは

「日本創成会議」人口減少問題検討分科会が2014年5月に発表し、「日本創成会議」座長・増田寛也氏の著書「 地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書) 」でも紹介された用語です。

その定義は「2040年までに20〜39歳の若年女性の人口が2010年比で50%以上減少する自治体」とのことです。

該当する自治体は896市町村におよび、過疎地域だけで無く、東京都豊島区も該当するということで、一部で話題となりました。

(該当する自治体の一覧はこちら→http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_1.pdf

なぜ20〜39歳の「女性」なのか

まずその定義からおかしい部分がここで、男性と女性でそこまで有意に人口動態に差が無いのであれば、「女性」にこだわる必然性があるとは思えません。

それなのに若年の女性の人口動態のみに着目するのは、それこそ、いつぞや批判された、女性を「産む機械」としてとらえているだけにしか思えません。

ただ、この定義自体を問題視している人は自分の観測している範囲ではほぼ見当たりません。 東京大学本田由紀教授がツイッターでつぶやいていたのを見た記憶があるぐらいです。

なにが消滅するのか

この用語が話題になった要因として、「消滅可能性」というショッキングな言葉を使用していることがあげられるでしょう。

ただ、自治体が消滅するとはどういったことでしょうか?そんなことがありえるのでしょうか?

それについては、おおむね下記ブログ記事で木下斉氏が述べているように、単に人口減や老齢人口比率の増加によって自治体経営が破綻するという、ずいぶん前から言われていることに過ぎません。

blog.revitalization.jp

こんなことは、ほとんどの自治体は言われるまでも無く認識していることでしょうから、いまさら言うまでもありません。

それなのに「消滅可能性都市」は2014年の流行語大賞候補にも選ばれたとのことですから、いかに人々がラベリングに弱いか、ということが実感されます。

豊島区が含まれるのはなにを意味するのか

この用語が話題になったもう一つの要因として、いわゆる「地方」の自治体だけではなく、東京都豊島区も含まれていたことです。ただ、豊島区の若年女性が減少している原因は「地方」の自治体の減少と同様の理由なのでしょうか?

(自治体一覧再掲http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03_2_1.pdf

上記の資料で確認すると、多くの「消滅可能性都市」は「人口移動が収束しない場合」の方が若年女性人口変化率のマイナスが大きいのに対し、豊島区は「人口移動が収束しない場合」の方がマイナスの推計が小さいです。

これは、要するに人口が流出する自治体では「人口移動が収束しない場合」の方が若年女性の流出が大きくなるためマイナスが大きくなるのに対し、人口を吸収する自治体では、「人口移動が収束しない場合」の方が若年女性の流入が大きくなりマイナスが小さくなるためです。

「人口移動が収束する」社人研推計の場合、豊島区だけで無く、「渋谷区」「中野区」「杉並区」の若年女性人口変化率も-50%を超えます。(どうせ話題作りなら、こっちの自治体の名前も出せば良かったのにね・・・渋谷区が入っていることでよりセンセーショナルになっただろうに)

そもそも、「若年女性」にこだわっていた原因は、「消滅可能性都市」に当てはまる自治体は、社会増の望めない(他の地域からの人口流入がない)ため、自治体が自然増に頼るしかないと考えていたためでしょう。

それなのに、人口移動が活性化した方が人口増加の望める、すなはち社会増の望める地域まで同じ尺度で「消滅可能性都市」としてしまうのは、その定義から破綻してしまっているように見えます。

人口推計は妥当か

豊島区で若年女性の人口が減少する原因として 狭小住戸集合住宅税(通称「ワンルームマンション税」)|豊島区公式ホームページという施策を行っていることが考えられます。

豊島区の人口動態https://www.city.toshima.lg.jp/373/kuse/shingi/kaigichiran/005922/documents/26dai1-siryou1-10_2.pdfを見ても、年齢区分は年少(0〜14)生産年齢(15〜64)老齢(65〜)といった大きなくくりなので、この条例の効果があったのかはよくわかりませんが、2013年に人口がグンと増えているため、この段階で2010年を元にした人口の推計は破綻している可能性があります。(しかし一年で4%も人口が増えるとは・・・再開発は恐ろしいです)

まとめ

「消滅可能性都市」は話題をとるためだけの、ろくな分析もない乱暴な印象論に過ぎないと考えます。

ただし、こんな言葉に関係なく、多くの自治体は今後の人口減少によりその経営について悩まされていくことでしょう。

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