都道府県単位で考えることの限界

長く慣れ親しんでいるためか、日本人は都道府県単位で物事を考えるのが大好きです。 出身地の話になった時に、多くの人はどこの都道府県出身かを話します(横浜、名古屋、神戸の場合は市の名前を(出身の市では無くても)話す人が多そうですが・・・)。

しかし、都道府県という単位は1890年以降100年以上にわたってほとんど変更されておらず、現在の社会情勢を判断するには必ずしも適切だとは思いません。

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先日このような発表がなされ、東京圏では人口の集中が続いているが、大阪・名古屋圏では人口が減少していると話題になりました。

しかし、この発表は東京圏を「東京・神奈川・埼玉・千葉」、「大阪圏」を「大阪・兵庫・京都・奈良」、「名古屋圏」を「愛知・岐阜・三重」と県単位でおおざっぱに分けており、必ずしも正しく分析できているとは思えません。(市区町村毎まで分析するのは手間が増えるので、都道府県で大まかな概要をつかみたいという意図はわかりますが)

こちらの資料に調査結果の要約が書かれていますが、その2ページ目に転入・転出のそれぞれ上位20自治体が記載されています。

それによると、「大阪圏」では転入上位に大阪市吹田市京都市豊中市と4つの自治体が含まれていますが、一方で転出上位にも寝屋川市東大阪市、牧方市、宇治市河内長野市と5つの自治体が含まれています。

トータルでは転出超過となった「大阪圏」ですが、大阪市は東京特別区部に次ぐ2位の転入超過数ですし、北に隣接する吹田市豊中市でも転入超過上位です。

要するに、日本全体の人口が減少する中で、大都市に近い自治体でも必ずしも転入超過は見込めず、地域内で条件のよい所との取り合いとなっているということです。

現に「東京圏」に含まれる横須賀市は転出超過数が2位ですし、福岡県には転入超過3位の福岡市と、転出超過1位の北九州市があるわけです。

市区町村毎の詳しい転入出の情況はこちらで確認できますが、東京都でも西部の東村山市武蔵村山市福生市羽村市などでは転出が超過していますし、必ずしも人口が増えているわけではありません。

市区町村まで細かく分析するのに手間がかかるのはわかりますが、もう少し丁寧に考える必要があります。

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