安易な東京論を述べる人は東京の巨大さを理解しているのだろうか

東京では〜地方では〜みたいな論を述べる人をよく見かけます。 (これとかこれとか)

ただ、こういった論で語られている東京は、おしゃれな繁華街であったり、サブカルチャーの聖地のみを指して東京と言っているだけで、「東京」全体の本当の姿を捉えられていないような気がします。 (だから、「地方」との対比において、的外れな印象を受ける)

そもそも、まず、東京はその面積が巨大です。 東京23区の面積は、623平方kmで、大阪市の3倍近く、名古屋市の2倍近くの面積があります。

もちろん、単に巨大な市であれば、平成の大合併で誕生した岐阜県高山市(2178平方km!)のようなはるかに巨大な市もありますが、ほぼ全域が市街地の市としては、破格の広さです。

なぜこんなに広いのかというと、例によって合併したからです。

1878年に制定された東京市の範囲は下記の範囲でした。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/ja/f/f7/%E6%9D%B1%E4%BA%AC15%E5%8C%BA1878%E5%B9%B4.png

現在の区でいうと、千代田区・中央区・港区・文京区・台東区と、新宿区・墨田区江東区の一部の範囲になります。 現在の東京を象徴する、新宿・渋谷・池袋の副都心は、東京市の範囲に含まれておらず、南豊島郡淀橋町などでした。 当時の東京市の面積は90平方kmほどのようだったので、現在の7分の1程度の広さだったことになります。

それが、1932年、1936年に周辺の市町村を合併し、現在の大きさになったわけです。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6f/Tokio_Eingemeindungen_1932-1936.png/800px-Tokio_Eingemeindungen_1932-1936.png

こうして生まれた東京都区部には当然のことながら、多くの人がイメージする東京の代表的な街だけでなく、様々な地域があります。 例えば上記の地図でいうと、足立区花畑、葛飾区水元などは、最寄り駅まで徒歩1時間以上かかりそうな地域を含んでいます。

東京だと消耗する〜と語っている人が、この地域のことをよく知っているとはとても思えませんし、新しくできた大田区城南島について詳しく知っている人もほとんどいないでしょう。

地方では東京と違ってマイルドヤンキーが〜みたいなことをいう人もしばしば見かける気がしますが、そもそもマイルドヤンキーの名ずけ親であるヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書) の中で、練馬区大泉町あたりに住んでいて、新宿よりも地元が落ち着いて、仲間と車でお台場に行くのが一番の楽しみという人がマイルドヤンキーとして紹介されていたはずです(随分前に読んだので記憶があやふやですが)。

さらに範囲を東京都全域に広げると、その中には奥多摩島嶼部も含まれますし、範囲を首都圏まで広げると(そもそもどこまでを首都圏とみなすかにもよりますが)様々な都市や自然環境を持つ自治体を含むわけです。

各地では、それぞれ開発(あるいは過疎化による商店街のシャッター化なども)が行われ、その姿を日々変化させています。 そんな中で、東京(首都圏)全域のことをよく理解している人は、まず存在しないでしょう(自分も含めて)。

東京の真の巨大さは、近隣の住宅地に住んで、繁華街をハシゴしているだけでは見えてきません。