オリンピックで外国人観光客は増えません
決定事項のように「東京オリンピックで外国人観光客が増えるので〜」という文言を見聞きすることが多々ありますが、果たしてこれは正しいのでしょうか。
外国までオリンピックを見に行く人はほとんどいない
2008年には北京でオリンピックがありましたが、日本から見に行った方はどれくらいいるでしょうか。 2016年にはリオデジャネイロでオリンピックがありますが、見に行く予定の人はどれくらいいるのでしょうか。
オリンピックおじさんのような例外的な方もいますが、ほとんどの人は外国まで行って生で見たいとまでは考えていないでしょう。
オリンピックへの関心が高いといわれる日本ですらそうなのですから、他の国から日本へ来る人が大勢いるとは考えにくいです。 特に、ヨーロッパや北米は日本から遠く、オリンピックへの関心も低いので尚更です。 中国、韓国、インドといったアジアの国々にオリンピックへの関心が高い国が多いのは好材料ですが…
オリンピックで外国人観光客が増えると言われている根拠はなにか
なぜ、オリンピックで外国人観光客が増えると言われているか、 官公庁の資料によると、 「開催決定後は、インバウンド需要が長期間にわたって喚起される傾向がある」そうです。
ただ、この資料をみても、オーストラリアは開催決定前10年のトレンドに飲み込まれて、 ギリシャは開催年に観光客数が落ち込んでおり、その効果は疑わしいように思えます。
そもそもロンドンではオリンピック開催中は一般客が観光を避けたため、かえって観光客数が減少したそうです。
世界的に国外旅行者は増加している
そもそも、世界的に国外旅行者は増加しているようです。
特に2003年からはかなり旅行者数が伸びています。 これは、各国、特に新興国の経済発展、LCCにより低コストで移動できるようになったこと、インターネットにより情報が入手しやすくなり、旅行者向けのサービスも充実した、といった要因によって引き起こされたと思われます。
先ほどの図表の、開催決定後は開催決定前10年のトレンドを上回る観光客が訪れる、というのも、この世界的な観光客増で説明できてしまうように思われます。
オリンピックで外国人観光客が増える理由
こちらのブログでも、私がこれまであげたのと同じような理由で、オリンピックは外国人観光客を増やす要因にはならないのではないかと述べられています。
しかし、以下のような理由で結果的に観光客が増えるのではないかと予想されています。
私はオリンピックは日本の観光にプラスになるとは思っているのですが、それはオリンピックが観光客を増やすからではなく、「オリンピックが観光客を増やす」と思う政府や民間が、観光客を受け入れるためのインフラ整備や規制緩和を進めるという、少し皮肉な理由からです。
私も全く同感で、ここ最近の観光客誘致に関する強い関心が、インフラや規制緩和のみならず、人々の意識を変えることで観光客の増加につながると考えています。
現に、直近の訪日観光客数は大きく伸びています。 といっても、その主な原因は円安によるものでしょうが…。
いずれにせよ、オリンピックそのものが多くの外国人観光客を呼び込むことはないでしょうが、今後ますます多くの外国人観光客が日本を訪れるようになるのはほぼ間違いないと思われます。 ともあれ、盛り上げないといけないのはわかりますが、オリンピックに対する期待が過熱しすぎのような気がします。観光客だけでなく、先日話題になった4万人のボランティアで働くソフトウェアエンジニアが必要という記事も、オリンピックに託けて以前から考えていた自分の主張をしているだけのように見えます。
こういった言説に惑わされずに、本当の需要を見極められるようにしていたいです。
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